Japanese Chemical Insights

  イソニアジド（Isoniazid）は、結核（TB）の治療に欠かせない医薬品有効成分（API）であり、今後も世界的に需要が伸びると予測されています。市場は2024年に2,090万米ドル、2032年には3,570万米ドルに達する見込みで、年平均成長率（CAGR）は8.2％と見られています。 この成長の背景には、特にアジア・アフリカ地域を中心に続く結核の高い罹患率、そして各国政府や国際機関による治療体制の強化があります。WHOもイソニアジドを「第一選択薬」として推奨しており、公衆衛生において非常に重要な位置を占めています。 地域別の市場動向 アジア太平洋地域、特にインドや中国は、イソニアジドAPIの生産・供給で大きなシェアを持っています。これらの国は、結核の発生率が高いだけでなく、生産コストが低く、製薬インフラも整っているため、世界的な供給拠点となっています。インドは、国内需要と海外輸出の両面で重要な役割を果たしています。 一方、北米や欧州は結核の発生率こそ低いものの、政府による備蓄や国際援助の一環として、安定した需要があります。アフリカは結核罹患率が高く、今後の市場拡大が期待される地域ですが、物流や保冷設備などのインフラ整備が課題となっています。 市場成長の主な要因 結核診断件数の増加 固定用量配合剤（FDC）の普及 発展途上国での政府調達の拡大 予防療法（特にハイリスク層向け）の需要増加 特にWHOが掲げる「End TB Strategy（結核撲滅戦略）」は、2035年までに結核による死亡を95％削減するという目標を持っており、これに沿った世界的な政策が市場を支えています。 また、治療継続率を上げるために、小児用製剤の改良や、新しい投与技術（例：溶けやすさや吸収性の向上）にも注目が集まっています。最近では、服薬状況をモニタリングするデジタルヘルス技術との連携も進んでおり、これが今後の市場成長にも寄与する見通しです。 市場の課題とリスク 成長の一方で、以下のような課題も存在します： 多剤耐性結核（MDR-TB）の拡大と、代替薬への移行 厳格な規制・認可条件 高発生地域での価格競争の激化 長期間（6〜9か月）にわたる治療による服薬中断のリスク 高温多湿地域での保管・輸送インフラの不足 また、COVID-19を通じて医薬品の供給網の脆弱性が明らかとなり、APIの...